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Webエンジニアです。日々の勉強記録、技術書感想、美術観賞感想を投稿します。

「グランマ・モーゼス展」感想

グランマ・モーゼス展 ― 素敵な 100 年人生」にいってきました。

www.grandma-moses.jp

グランマ・モーゼス展 ― 素敵な 100 年人生

グランマ・モーゼス展 ― 素敵な 100 年人生」は、東京都世田谷区にある世田谷美術館で開催されました。 会期は 2021 年 11 月 20 日(土)〜2022 年 2 月 27 日(日)となっています。 11 月 28 日に鑑賞しにいき、所用時間は1時間30分ほどでした。 10 時に観に行ったわりには、人が多かったですが、気にするほどの人混みではありませんでした

グランマ・モーゼスは、本名アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼスであり、70 代で絵を本格的に書き始め、亡くなる 101 歳まで絵を書き続けたアメリカ人の画家です。 牧場や農家の暮らしをモチーフにした作品となっており、彼女の陽気な風景画は、第二時世界大戦の恐怖でトラウマを負い、冷戦の現実を受け入れ始めたばかりの人々に慰めを与えました。

本展では4つのセクションにわけて、グランマ・モーゼスの作品が展示されています。 グランマ・モーゼスの回顧展は 2005 年以来だそうです。

作品 概要 感想

以下の 4 つのセクションで構成されています

  1. アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス
  2. 仕事と幸せと
  3. 季節ごとのお祝い
  4. 美しき世界

1. アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス

このセクションでは、グランマ・モーゼスの初期の作品、制作に使っていた道具(机、絵筆、絵の具の瓶)、家族の写真が展示されております。 グランマ・モーゼスの作品が行き渡るようになったきっかけは、オットー・カリアーが村を偶然訪れた際に作品を気に入り、購入し他の場所で個展を開くようになってからです。 また、制作の使っていた道具はまじかでみることができます。机の脚部には風景画が描かれており、よほど気に入っていたのかと想像させられます。 また、絵の制作前に取り組んでいた刺繍も展示されており、色の使い方、立体的な表現も必見です。

2. 仕事と幸せと

「仕事と幸せと」とは彼女の 95 歳の誕生日の際に書いたエッセイの題名です。 農村では、季節毎の仕事(石鹸作り、蝋燭作り、作物の収穫)を村人全員でおこないます。 こうした仲間意識を育む機会でもあった仕事や、その他のイベント(結婚式、引っ越し)などを描いた作品がこのセクションでは展示されています。 現代ではあまりない村ぐるみの付き合いが、当時は当たり前であり、それを切り取った作品群を見ることができます。

3. 季節ごとのお祝い

季節毎の特別なお祝い事を切り取った風景画が展示されています。 四季折々な作品をみることができます。

4. 美しき世界

グランマ・モーゼスの主なモチーフである、風景画があらためて展示されています。 彼女が、自然風景をどのように感じ取っていたのかが解説されています。 風景は比較的写実的な描写を使ったりするのに対して、動物や人間の表現はとても抽象的に描かれます。 これらのように、風景画と人物画を切り離して捉えていたことがわかります。 また、絵を書き始めてから数年たった後だったため、初期の作品よりも、緻密に絵が描かれている部分を感じられます。

その他

他の展示としては、グランマ・モーゼスは TIME の表紙になったり、作品が印刷された食器だったり、表彰された時の賞状の複製などがあります。 他には、絵画以外の作品として、絵本やエッセイもあります。 また、孫や娘のために作った洋服や小道具なども展示されており、必要なものは作っていた当時の考え方暮らし方を見ることができます。

感想 まとめ

70 代から画家になり、アメリカで有名な画家の一人となったグランマ・モーゼス。 何歳になっても始めるのに遅すぎるというのはないということを感じさせてくれます。 刺繍をやっていたおかげか初期の作品から色の取り方はとても美味かったですが、晩年の作品は作品の緻密さが向上しているように見えました。 何年になっても新しいことに挑戦したい気持ちになりました。

本展では、印象派の風景画に現れる表現技法ではなく、自分がみたままに絵に起こした作品をみることができます。 グランマ・モーゼスがの人生で見てきた印象的な出来事を起こしており、作品で伝えたいことは明確に感じられました。 個展で評価されるためだったり、新しい表現に挑戦したり、などということではなく、素朴な作品たちにはこれまで以上に作者が伝えようとしているものがわかりやす気がします。

コレクション展などで、時代による作品の変遷などを繰り返し観てきた自分にとっては、技法などを考えずに作られたであろう作品は逆に新鮮でした。 70 代から絵を書き始めた人に興味がある人、印象派の作品に飽きてきた人におすすめできるのではと思います。