東京美術館で開催されている,「没後 70 年 吉田博展」にいってきました.
概要
吉田博(1876-1950)は明治,大正,昭和にかけて活躍された版画家です.
風景画が主な作品の対象で,「日本の山岳」が特に多いです.
版画の色摺は 10 枚が通常らしいですが,吉田博は平均 30 摺,最も多い作品で 100 摺ぐらいだそうです.
山の風景は実際に登山をおこなって気に入った景色が現れるまで待つほどこだわって作られていたとか.
海外の風景も数ヶ月に及ぶ旅行の間ひたすら書き続けられたものらしいです.
「グランドキャニオン」,「ナイアガラの滝」など有名な景色が版画の繊細なタッチと色で作成されています.
感想
色の塗り方がとても繊細でどの作品もとても美しいです.
特に山の作品は光のグラデーションがとても綺麗に描かれています.
展示会の冒頭は活動初期の水彩画と油彩画が作成されており,当時から風景画を作成されていました.
水彩画も油彩画も,そのままで十分美しいと思いましたが,後に本人が版画で作り直しており,二つの違いを楽しむことができます.
展示会は吉田博の版画を時系列順に楽しむことができます.
最初は日本の風景がメインでしたが,関東大震災を気に絵を売りに渡米した際に様々な風景を写生したものが版画として作成されたり,吉田博の家族の版画や,ダイアナ妃が飾っていたという版画などをエピソードと共にみることができます.
個人的には,水面に反射がとても綺麗に描写されているところが好きです.
富士山,船,建造物のどれも必見です.
特に巨大な版画に書かれた逆さ富士の絵は迫力満点です.
個人的に一番好き作品は「神樂坂通 午後の夜」です.
雨に濡れた夜道の反射を表現しています.
水面や水溜りの反射は今まで見ていましたが,雨に濡れた道を見るのは初めてですし,夜という反射を表現するのが難しそうな状況で描写されていたのが衝撃的でした.
展示会の全体を通して,その美しさに目を奪われる箇所が多く,版画の表現の繊細さに驚きました.
版画をたくさんみるのは初めてだったのですが,他の有名な版画家の展示会も観に行こうかな...
所要時間は 1 時間 30 分〜2時間です.