概要
「JaSST'23 Tokyo」に参加しました。 感想を書きます。
前提
目的
今年学ぶものとして、ソフトウェアテストを掲げていました。 どのような順番で学べば良いのか考えているときに、JaSST の存在を知りました。 歴史あるテストのシンポジウムということもあり、初心者でもテスト技術、テスト界隈の現状、キャリア論といったことを幅広く学べるのではないかと考え参加しました。
事前知識
新卒から Web エンジニアとして働いており、ソフトウェアテスト初心者です。業務のソースコードで、テストコードを書いたり、統合テストを独自のやり方で設計、実行したりしていましたが、体系的なソフトウェアテストに関しては学んだことはほとんどありませんでした。 JaSST'23 Tokyo 参加時には、JSTQB Foundation Level の勉強中でした。4 月に受験予定です。
過去にソフトウェアテスト関連では下記の書籍を読みました。
- 知識ゼロから学ぶソフトウェアテスト【改訂版】
- ソフトウェアテスト技法練習帳 ~知識を経験に変える 40 問~
- ソフトウェア品質を高める開発者テスト 改訂版 アジャイル時代の実践的・効率的でスムーズなテストのやり方
- 【この 1 冊でよくわかる】 ソフトウェアテストの教科書[増補改訂第2版]
開発者目線のテストだったら、下記の書籍を読みました。
感想
ソフトウェアテスト界隈の技術、著名人、企業などを広く知れたため、目標だった「ソフトウェアテスト関連について広く知ること」を達成できました。 特に下記の観点で、普段の業務では中々知り得なかった知見を得られたため、参加できて良かったと思いました。
- カオスエンジニアリングのための CI/CD/CV といったテストにおけるモダンな概念
- クオリティエンジニアリングというエンジニアリングの考え方
- QA 活動(シフトレフト、自動化、アジャイルテスト、ミューテーションテスト)を行った経験の共有
逆に、聴講していて理解が難しかったり、あまり印象に残らなかったのは下記のことがありました。
- テストツールについて込み入った内容。普段利用しておらず利用する予定が今後もないので、理解が難しかった
- 社内や当人達の界隈で閉じられた内容に感じられたもの
他に、JaSST'23 Tokyo で事前に知りたかったこととしては下記があります。
- アーカイブに残る講演と残らない講演を事前に知りたかった
- ホームページのタイムテーブル以外に、予稿集を見て聴講する講演を判断したかったが、予稿集の内容がスライドだったり、書いていなかったりしたためあまり参考にならなかった
- 同時翻訳はアーカイブに残らないこと
以降、印象に残った講演の感想を簡潔に記載します。
Day 1
「Chaos Engineering to Continuous Verification」
カオスエンジニアリングの著者の Casey Rosenthal による講演でした。 カオスエンジニアリングの定義、インシデントに対する 7 つの神話、 Rversibility はコントロール可能、CI/CD そして CV といった話をされていました。 第一人者ということもあり、非常に興味深かったです。 Twitter でイラスト付きで丁寧に紹介している方がいらっしゃったので、そちらもご参照ください。
基調講演のグラレコを放流しますー! @Sara999M に描いていただきました! #jassttokyo pic.twitter.com/wrx2kAMBr5
— うへの / Ayako, UENO (@yeHoaqko) 2023年3月10日
「カオスエンジニアリングの裏話」
カオスエンジニアリングの翻訳者の方々がどのような経緯で翻訳されることになったのかと、カオスエンジニアリングそのものについての説明をされていました。 翻訳書が作成される経緯に加えて、翻訳者たちの解釈がわかりやすく説明されていて、勉強になりました。
「What Makes A Good Software Tester」
良いテスターになるための 10 個のスキルについての解説でした。 それぞれのスキルがなぜ必要なのかを解説されていました。
- Technical Skills
- Critical Thinking
- Efficiency
- Visibility
- Agility
- Communication
- Stress Management
- Orchestration
- Personal Growth
- Sharing
「ミューテーションテストの取り組み」
高橋寿一先生がいる、株式会社 AGEST によるミューテーションテストの説明と導入したヤフー株式会社の説明でした。 ミューテーションテストとは単体テストそのもの品質の検証行う手法であることや、ミューテーションテストを導入するにあたっての合意形成や効果などを知ることができました。
「テストエンジニアのキャリア いつからテストエンジニアだったのか?」
テストエンジニアに限らず、キャリアについて考えるセッションでした。 ソフトウェアテストの勉強を始めた当初、テストエンジニア、QA エンジニアといった言葉の定義が知りましたが、現在もあいまいなので知りたくて聴講しました。 もともと抽象的な内容で答えがないものですので、発表全体を通してうまく自分自身の解釈を見つけることができませんでしたが、キャリアについて考える一助になりました。
Day 2
「令和の技術書の語り場」
技術評論社、翔泳社、Oreilly、ラムダノートといった著名な技術書の出版社の方々が集まって議題について話し合うセッションでした。 ソフトウェアテストのシンポジウムなのに、こういったセッションもあるのかと驚きました。 技術書を購入することは半分趣味のようになっているので、その業界の人から話を聞けるのは貴重な体験になりました。 アーカイブがないことだけが残念です。
「シフトレフトの失敗事例から学ぶ次のアプローチ」
株式会社 AGEST によるシフトレフトの導入事例の紹介でした。 導入事例に加えて、失敗事例も紹介していたので興味深かったです。 失敗内容も、シフトレフトが合わなかったというよりも、GQM 法を合意形成やトレードオフを意識せずに実践しようとしたら上手くいかなかったような内容でした。 ソフトウェアテストのような品質を見据えた開発プロセスの改善を導入しようとしても、導入の困難さを認識しました。
「テスティングからクオリティエンジニアリングへの変革の必要性」
クオリティエンジニアリング(QE)というテストと QA を包括する、品質を最適化するための開発プロセスの説明でした。 テスト、QA、QE それぞれの定義を解説し、どのようにすれば QE を達成できるのか、必要なスキルセットやマインドとは何なのかについて説明する内容でした。 プロダクトライフサイクルについて焦点を当てるエンジニアリングは、個人的には刺さる部分があり、JaSST'23 Tokyo で最も興味深かった発表でした。
「LeSS のつらみ、複数チーム横断 QA のお悩みを深堀ってみよう」
LeSS とは Large-Scale Scrum のことです。 アジャイルは小規模なイメージが強かったので、LeSS といった概念があるのは知りませんでした。 各社でどのような取り組みをしているのか、課題の共有といったことが興味深かったです。
「本の品質はどのように作られるのか~プロマネとして書籍編集者がしていること」
技術評論社の傳智之氏による招待講演です。 長年の経歴かから得られる、本の品質の作り込みの話がおもしろかったです。 本に関しても細部への作り込みがあるからこそ電子書籍が増えていっても一定は刷られ続けるんだなと思いました。
参加感想まとめ
JaSST はソフトウェアテストに限らない知見を得られる良いシンポジウムでした。 自分はソフトウェアテスト初学者ですが、わからないことがありつつも得られるものがありました。 相当な労力をかけて開催した運営の方々に感謝します。
個人的な感覚としては有意義な時間になったのが半分で、そうでもなかったのが半分でした。 半分は有意義な時間となった理由は、ソフトウェアテストに関する知識、概念、キャリア、体験談などは普段学ぶ機会がなく、初心者でも知識の裾を広げられたという意味で参加して良かったと思いました。 残りは、あまり有意義な時間にならなかったのは自分が初心者であることで込み入った話を理解できなかったことが原因です。 次回参加するときには自分なりに知見や考えを持った状態でありたいです。
そして、今回の参加を踏まえて、以下のことを実践します。