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Webエンジニアです。日々の勉強記録、技術書感想、美術観賞感想を投稿します。

「イノベーションのジレンマ増補改訂版 (Harvard Business School Press)」 感想

イノベーションのジレンマ増補改訂版 (Harvard Business School Press)」[ クレイトン・クリステンセン (著), 玉田 俊平太 (監修), 伊豆原 弓 (翻訳), 2001]を読みました。

感想について記述していきます。

感想

会社の方に進められていたのと、「リーン・スタートアップ」で紹介されていたので読みました。

なぜ、市場をリードしている企業が新興企業に追い抜かれるのかについて解説するビジネス書です。 様々な企業のパターンを踏まえて解説をします。 改訂版が 2001 年ということもあり、解説の例が 1980 年代から 1990 年代のディスクドライブメーカーや掘削機メーカーなどと古いです。 そのため、知らない企業や時代背景などが前提となっているため少し読みづらいです。

破壊的イノベーションの原則は、次の通りです。

  • 原則1:企業は顧客と投資家に資源を依存している
  • 原則2:小規模な市場では大企業の成長ニーズを解決できない
  • 原則3:存在しない市場は分析できない
  • 原則4:組織の能力は無能力の決定的要因になる
  • 原則5:技術の供給は市場の需要と等しいとは限らない

大企業は、先端技術の研究をおこたって衰退するのではなく、むしろ既存の顧客のニーズに答えることで、利益を追求しようとした結果だということがこの本で繰り返し書かれていることです。
大企業には、持続的イノベーションに利益をうける顧客と投資家がいます。それらにニーズを無視した製品をだすことはできません(原則1)。 小規模な市場に売り込もうとしても、既存の製品と比較して利益が低いため、社員と投資家に対して参入することを説得できません(原則2)。 大企業の優秀な経営者たちは、既存の製品の売り上げを成長させることに長けています。しかし、それは既存の市場の話です。そもそもあるかどうかわからない市場に対して分析をすることはできないし、したとしてもだいたい間違っています(原則3)。 組織のできること、できないことは、資源、プロセス、価値基準の3つです。これらを適切に見極めることでできないことを判断します(原則4)。 ある性能で非常に優れた製品を作ったところで、市場の顧客たちが既存の製品に十分に満足していれば、興味をもたず、他の価値基準を探しています(原則5)。 このようにして、大企業はイノベーションのジレンマに陥ってしまいます。

対して、破壊的イノベーションでは、顧客と投資家を持たないため自由に作れ(原則1)、小規模な市場を見つける or 存在しない市場を作る(原則2、原則3)、資源-プロセス-価値基準が破壊的イノベーションをベースにしているから実現可能である(原則4)、小さく始めることとから市場の供給にマッチし、いつしか業界に求める需要になっていく(原則5)のため、成功する。 このようにして、破壊的イノベーションは市場に変化をもたらします。

イノベーションのジレンマを解決する手段は具体的にはありませんが、陥らないようにするため、社内で組織をわけたり、思いも寄らない市場を見つけたりと、対策についてもふれらています。

思いもよらなかった、大企業が衰退していく理由、破壊的イノベーションが成功していく過程などが書いてあるため、興味深い本でした。 ただ、出版年が古いため、昨今の IT 企業やテスラなどのイノベーターたちにこれらの理論をどのようにして解決しているのか、それとも苦しんでいるのかが気になりました。 また、日本語訳の仕方も一つの原則に対して具体例が長すぎるため、少し読み辛かったです(出典や数字の比較が曖昧なビジネス書よりは信憑性がありますが)。

まとめると、2001 年時点で大企業がなぜ衰退するのかまとめた本になります。理由付けがとても具体的で説得力があります。 ただ、例が古すぎて若干読みづらいのと昨今の企業事情については解説できないのが気がかりでした。 他の書籍に紹介される名著なので、紹介元の本が好きだったり、企業について知りたい人にはおすすめです。