msksgm’s blog

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Webエンジニアです。日々の勉強記録、技術書感想、美術観賞感想を投稿します。

「竜とそばかすの姫」感想

竜とそばかすの姫」を観ました。
細田守の3年ぶりの新作です。
未来のミライ」はみていませんが、「デジモンアドベンチャー」、「ぼくらのウォーゲーム」、「時をかける少女」、「サマーウォーズ」、「おおかみこども」、「バケモノの子」は試聴済みです。

感想

過去作品との比較と物語構成の2点で感想をかきます。

過去作品との比較

サマーウォーズ」から 10 年ごしのインターネットを主題にした作品です。
ぼくらのウォーゲーム」も考えると 10 年ごとにインターネットを題材にした作品を作っています。
サマーウォーズ」、「ぼくらのウォーゲーム」と比較すると、世界観は広いように見えて狭いです。
主人公は世界中に注目される歌姫ですが、高知に住んでいたり、ひょんなことでクラス内でいざこざがあったり、スクールカーストをきにしたりと、タイトルに反して身近な世界観です。
なので、ネットがテーマだから「サマーウォーズ」や「ウォーゲーム」などのインターネットを通じた世界危機や SF 要素を期待してを観ようという人からすると拍子抜けすると思います。

しかし、インターネットに対する描写は良い面も悪い面もリアルです。
普段は普通な主人公がインターネットでは有名人になったり、ネットを介した誹謗中傷の描写や、登場人物の一人である「竜」に対してヘイトが集められるシーンは、他の作品にない部分です。
「家族」や「こどもたち」がテーマな作品が多い細田守作品のなかで、2021 年度版「インターネットとこどもたち」という印象が強いです。

他作品にはない点として、ミュージカルシーンがあります。
こちらの演出に特に力を入れており圧巻でした。
美女と野獣」に似ていると思ったら、ディズニーのクリエイターがいたり、細田守自身が「美女と野獣」が好きだったりと、意識して作られた場面は多そうでした。
冒頭のシーンはとても引き込まれるため、CM を観て期待した人たちに答えられる内容だと思います。
「すず」(ベル)以外が歌うシーンがないのも、まとまりがあって観やすいと思いました。

ストーリーについて

先の展開が読みづらく退屈させにくい展開でした。 しかし、一貫性が乏しく、内容が薄く感じてしまうストーリーでもあると思います。

物語は、大きくわけて「すずについて」、「周囲の友人と大人について」、「U の世界について」の3つに分類され、それぞれを細かくわけると9つぐらいある気がします。 そのため、それぞれに対してさまざまなことをやろうとしているので、まとまりがない内容となっています。
また、登場人物が多すぎるので、それぞれに役割を持たせようとした結果、さらに薄くなっている気がします。

「すず」、「竜」、「しのぶくん」、「カミシン」、「ルカちゃん」、「ヒロちゃん」、合唱隊の大人5人、「すず」の父、「すず」の母、の他に、悪役(悪と断言しづらいが)、「竜」の正体候補、ガヤのアバターなどなどです。
普通のアニメ映画だと普通なのかもしれませんが、ミュージカル映画であること、現実世界と U の世界の2つがあること、を考えると、役割が薄くなったり、物語の本筋とは関連が見えづらいシーンが増えている印象でした。

そのため、最終的なゴールが見えづらかったです。
ゴールは「竜」の正体を見つけて会うこと?、「すず」の心の問題を解決すること?、それに対して、周囲との関係は何の役割があるの?
などと、演出自体の盛り上がりがありますが、物語のクライマックスとしての盛り上がりは感じられませんでした。

感想まとめ

ここ最近の邦画のアニメ映画で、ここまでミュージカルシーンに力をいれているのは他にない(「打ち上げ花火下からみるか横からみるか」とか?)と思うので、ミュージカルシーンみにいくだけでも価値があると思います。
ストーリーはいろいろつめこもうとして、薄くなっている感が強いので、ストーリーに期待しすぎるのは良くないと思いました。

しかし、観ていてストレスがたまるようなキャラや展開がないので、細田守作品が好きだったり、夏の間に映画を見たい、CM の世界観とミュージカルの演出に惹かれた、などという人にはおすすめできる作品でした。